番目のアクセスありがとうございます Last Modified 12 May. 2000
東京地方税理士会保土ヶ谷支部の若手税理士仲間の任意な勉強会「ヨコママ無名熟」で、現在話題となっているSPC法について、馬場由布子税理士からパネラーとして報告がありましたので、本人の協力を得てここに紹介します。
SPC法について
2000年4月7日
パネラー担当:馬場由布子
1.証券化の仕組み
1)証券化とは何か
2)2つの証券化
3)証券化のメリット
4)証券化を可能にする条件
5)証券化の歴史と日本の証券化市場の規模
2.SPC法の概要
1. SPC法の制定目的
2. 特定資産の範囲
3. 会社の組織
4. SPCの設立・登録と証券化の流れ
1)SPCの設立
2)登録
5. SPCが発行できる証券
6. SPCの税務
1)SPC自体の税務
2)投資家の税務
3)不動産の売主等の税務
7. SPCの会計
1) オリジネータの会計
2) SPC自体の会計
1.証券化のしくみ
1)証券化とは何か… 債権や不動産といった資産を金融技術を使って、証券の形に変えること
2)2つの証券化
@企業金融の証券化 社債、CP等の発行
企業が資金調達をする際に、銀行等から借り入れるのではなく,自社で各種の証券を発行することにより資金調達をすること
価値判断は証券を発行する企業自体
A資産金融の証券化 ABS(資産担保証券)等
企業等がその保有する資産をほかの資産と区別し、その資産を裏づけにした証券を発行して資金調達すること
価値判断は企業でなく証券化対象になる資産そのもの
今日でいう「証券化」とは、b)のことをいう。
3)証券化のメリット
@リスク回避→他者(投資家)に移転可
A低コストでの資金調達→証券化対象資産の信用力により自社よりも高い信用力が得られる
Bオフバランス効果→総資産利益率(ROA),株主資本利益率(ROE)等の財務指標の改善、
BISの自己資本比率規制のクリア
C資金調達方法の多様化→銀行借入や社債発行以外の方法での調達
D投資対象になる商品の選択機会が増大すること(商品特性の明確化,ポートフォリオの分散効
果,高格付と高利回り)
E新しい事業機会
Ex.不動産と証券の違い
図表1−1
|
|
|
不動産(モノ) |
証券(カミ) |
|
|
|
動かない |
動かせる |
|
|
|
ひとかたまりで小分けできない |
小分けして、他数の者に渡せる |
|
|
|
値段が高い |
小分けにより単位価格が低い |
◎「モノ」から「カミ」へ→不動産そのものの売買ではなく、不動産からの収益を受取れる権利を売買する。
◎「かたまり」から「小分け」へ→不動産代金の全額を払う必要は無く、小分けされた証券部分だけを払う。
◎「不動産証券化」とは、実際に不動産そのものを買わせるのはなく不動産を利回りの高い投資商品に仕上げて(投資商品に変換して)それを売るという仕組み
4)証券化を可能にする条件 (不動産証券化)
キャシュフローの源泉は? (今回のSPC法において)
@不動産そのもの(Equity)の証券化
a)不動産貸付の賃料収入
b)不動産を売却する時の代金
A不動産を担保とする債権(Debt)の証券化
a)定期的に入る元利金
b)担保不動産を売却する時の代金
◎不動産の収益性において必要なファクター
・賃料収入,必要経費の多寡,ビル管理会社の優劣,税金(課税を通り抜けされる導管体の確保)
5)証券化の歴史と日本の証券化市場の規模
証券化は、アメリカで発達・拡大した金融技術。はじまりは、70年のMBS(住宅モーゲージ担保証券)の発行とされている。わずか30年の歴史しかないと言える。その後、証券化対象資産を不動産や他の金融資産に拡大している。
日本での証券化は、20年ほど遅れた80年代後半頃から日本の銀行がBIS(国際決済銀行)の自己資本比率規制を意識しはじめてからスタートした。この頃から、金融機関が持つ住宅ローン債権の流動化や、貸付債権の流動化の動きが活発化した。その後の92年に成立した特定債権法は、リース会社が保有するリース債権や割賦債権の流動化を一気に促進させる。不動産の証券化では、不動産特定共同事業法、SPC法により発行額が増えてきている。99年からは、郵貯・簡保資金が一定の条件を満たした資産担保証券を購入できるようになった。
2.SPC法の概要
1998年9月にSPC法が施行された。このSPC(Special Purpose Company)法の正式名称は「特定目的会社の証券発行による特定資産流動化に関する法律」とその整備法です。これは、ケイマン諸島等のタックスヘイブンに設立するSPCとは全く関係無い法律である。
Memo)2つのSPC
|
|
|
対象資産 |
設立に関しての規制 |
経緯 |
|
1 |
海外SPC |
あらゆる資産の 証券化に有効 |
自由 |
タックスヘイブンに設立 |
|
2 |
国内SPC |
指名金銭債権 不動産 |
SPC法により届出 義務 |
1998年9月施行 |
1998年4月の新外為法施行によりいわゆる金融ビッグバンがはじまり、その一環として直接金融の規制緩和が進んだことで、外資系金融機関のみならず、日本の金融界も独自に証券化を手掛けられるようになってきた。そして、債権や不動産といった資産の証券化においては、SPCに代表されるいわゆる導管体の存在が不可欠となってきた。ただし、この時期は、金融不安がピークに達していた時期でありSPCが不良債権処理や担保不動産の流動化の手段としてのみ捉えられがちでもあっと思われる。
1.SPC法の制定目的(法第1条)
SPC法は、資産の流動化に対するさまざまなニーズに応え、特定目的会社(SPC)を活用して資産の流動化を行う制度を創設し、一般投資家による有価証券を通じた資産に対する投資を容易にすることにより、資産流動化の促進を目的としている。その条文は、185条にも及ぶ。
資産のうち金融機関の貸付債権やリース・クレジット債権は、ケイマン諸島のような海外タックスヘイブンや国内の商法上の株式会社を用いて既に有価証券化されている。ただし、規模は少数である。理由としては、ケイマン諸島は、英国の法規・会計が適用され、日本と制度が異なるため、個人投資家への販売となると抵抗があること(オフショア投資)、国内株式会社では会社設立・維持や税金等のコストが高くついてしまうことがあげられる。
今回のSPC法は、従来のものには規制を加えず、一般投資家も安心して購入できる投資家保護法制を兼備した制度を創設することもその趣旨としている。
2.特定資産の範囲(法第2条第1項)
SPC法において流動化の対象となる「特定資産」の範囲は以下の通りです。
@不動産(宅地,建物)
A指名金銭債権(具体的には、銀行の貸付債権、リース債権、企業の売掛債権などが該当する)
Ba)b)を信託する受益権
3.会社の組織
SPCは商法上の会社ではなく、この法律に基づく特別な社団法人で、おおむね以下の特色を持っています。(図表2−3−1参照)
1)商法上の株式会社と比較して、組織・資本面で簡素化されている。
@取締役は1人以上(株式会社は3人以上)
尚、以下の者は、利益相反行為を防止する意味から、取締役になれない。
・特定資産の譲渡人、譲渡人が法人の場合はその役員
・特定資産の管理処分の受託者、受託者が法人の場合はその役員
・特定資産が受託受益権である場合は、受託者である法人の役員
A取締役会は置かない(株式会社は要設置)
B最低資本金は300万円(株式会社は1,000万円、有限会社は、300万円)
cf.海外SPCには最低資本金の制限がない。
2)業務が「特定資産の流動化」に係る業務及びその附帯業務に限定。
3)特定資産の管理・処分は、適切な受託者に委託しなければならない。
4)他業禁止であり,特定資産の処分の制限、借入の制限等の制約が課されている。
5)定款に「存立の期間」を明記しなければならない。特定目的を達成したら解散すべきで、一般的な事業を永続的に行うことは許されない。
4.SPCの設立・登録と証券化の流れ
SPCが、業務を行うためには、内閣総理大臣(金融監督庁長官)への登録が要件となる(法第3条)。登録が受理されるためには、SPCとして設立され,法人格を生じさせることが必要となってきます(法第8条)。
1)SPCの設立(法第18条から第25条)
@発起人による定款の作成、署名または記名押印。
発起人は行為能力があれば自然人でも法人でもよく、人数の上限下限の制限はない。ただし、ノンバンクがSPCを利用して社債を発行することについては、出資法第2条により発行の制限が設けられる可能性がある。
定款には、以下の事項を記載する。
a)目的
b)商号−「特定目的会社」と入れることが必要。
c)本店の所在地−特に制限はないが、海外では本店所在地において日本法に
基づく登記が出来ないため、現実には日本国内となる。
d)特定出資の額−300万円以上
e)資産流動化計画
f)公告の方法
g)発起人の氏名・住所
h)存立の時期または解散の事由
SPC法の定款は、公証人の認証を受ける必要があります。
A発起人による特定出資の総口数の引受・払込
B発起人による取締役・監査役の選任
C設立の登記
2)登録
SPCを設立すると、次に登録申請をする。登録に際しては、以下の内容を記載した申請書を内閣総理大臣(金融監督庁長官)に提出する。
@商号
A営業所の名称・所在地
B役員の氏名・住所並びに政令で定める使用人があるときは、その者の氏名・住所
C資産流動化計画
Dその他総理府令・大蔵省令で定める事項(主要な特定社員の商号、氏名または名称、住所等)
そして、以下の書類を添付する。
@定款(資産流動化計画)
A資産流動化実施計画
B資産流動化計画で定められた「特定資産の譲受け契約書」案
C資産流動化計画で定められた「特定資産管理等委託契約書」案、その他総理府令・大蔵省令で定める契約書(特定資産を信託する信託に係る契約)の案
Dその他、総理府令・大蔵省令で定める書類。(SPCの登記簿の謄本、役員・重要使用人の住民票の抄本等)
登録申請を受けた内閣総理大臣は、以下にあげる事由がある場合を除き、当該SPCの登録を行わなければならないとされている(法第7条第1項)。その事由としては、(法第8条第1項)
@特定目的会社ではない者
A資産流動化計画その他の定款の規定または資産流動化実施計画、特定資産譲受契約書案もしくは特定資産管理委託等契約書案の内容が法令に違反している特定目的会社
B役員または政令で定める使用人のうちに次のいずれかに該当するもののある特定目的会社
a)禁治産者もしくは準禁治産者または外国の法令上これらと同様に取扱われている者
b)破産者で復権を得ないものまたは外国の法令上これと同様に取扱われている者
c)禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがな
くなった日から3年を経過しない者
d)SPC法、商法等各種法律の罰則により刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはそ
の刑の執行を受けることがなくなった日から3年を経過しない者
e)登録を取り消された特定目的会社において、その取消の日前30日以内にその役員または
政令で定める使用人であったもので、当該取消の日から3年を経過しない者があげられてい
る。
図表2−4−1 SPCの設立の流れ
不動産の選定
SPCの設立
金融監督庁へのSPCの登録
登録の終了 有価証券届出書提出
![]()
SPCへの特定資産移転 証券の販売開始
![]()
![]()
譲渡代金への支払 証券の払込
以上が設立手続だが、この規則を見る限りでは、良質の不動産を市場で探してそれをSPCで取得し、その後証券化するという機動的なやり方は、ほとんど不可能に近いと思われます。日本でのSPC法が前提にしているのは、あくまでも金融機関の不良債権や一般企業が持つ売掛債権等の流動資産の流動化である。そこに不動産のような固定資産も組み込んで、すべて同質のストラクチャード・ファイナンスの仕組みにしようという発想ではとてもアメリカの資産流動化ビジネスの様にはいかない。アメリカでは、不動産のエクイティ部分に特化したスキームと、デット部分に特化したスキームが別個に構築されている。日本のSPC方では、デット型もエクイティ型も同じ1つのスキームを使ってやっていくといっているようなものです。
その他一般にSPC法の問題点として指摘されているのは次の点です。
1)不動産投資ファンド的な自由で機動的な運用が出来ない。
Ex.・資産流動化計画にない借入は出来ない。
・あらかじめ将来の資産処分計画を決めなければならない。
・資産の入れ替え・処分・証券の追加発行等が認められない。
・資産の管理運営を外部委託しなければならないなど
2)SPCが上場できる見通しがないので、エクィティの流動性や透明性がかなり低い。
3)SPCの倒産隔離(バンクラプシー・リモート)が不完全。
4)SPCの登録に要する時間が長過ぎる。
5)法制度創設に大蔵省が絡んでくると…………。(不動産に対するのイメージ?)
5.SPCが発行できる証券
SPCが発行できる証券は、証券取引法上の有価証券となり、次の3種類がある。
1)優先出資証券(Equity:エクイティ)
株式会社でいうと優先株に当たるもので、定期的な配当を受け、SPCの会社存立期間の満了時にSPCが所有する財産の処分益から優先的な分配を受けることが出来る。
エクイティは、定率の利払いを受けるデットと違い、事業収益が良ければ高い配当が期待できる反面、元本の保証がないというリスクがある。とりわけ、現在のような右肩下がりの地価動向のもとでは、所有財産処分に当たり、キャピタルロス発生のリスクが高い。そのため償還が確実に行われる社債よりは、通常高い利回りが設定される。
この優先出資に対し「特定出資」というものがあるが、これは最初に述べたようにSPCを設立する時の資本金のことである。
2)特定社債(Debt:デット)
いわゆる社債であり、投資家は通常、定期的に決められた利率による利払いを受け(定額)、償還期間の到来時に元本を償還してもらうことが出来る。元本の償還は、SPCが破綻するなど特別のことがない限り保証されており、また社債購入者は、SPCについて何らの責任を負わない。利回りは低い。
3)特定約束手形(コマーシャル・ペーパー)
コマーシャル・ペーパー(CP)とは、信用度の高い企業・金融機関が、短期の運転資金の調達を目的として振り出す短期の無担保約束手形のこと。
通常、額面は1億以上、期間は2週間以上9ヶ月以内、販売先は期間投資家に限られるなどの制約がある。長期の計画を組む不動産証券化において、CPが発行されるケースはあまりなく、債権の証券化に利用されることが考えられる。
図表2−5−1 3種類の資産対応証券
SPCのバランスシート
(資産) (負債・資本)
|
|
特定社債券 |
|
|
特定約束手形 |
|
|
優先出資証券 |
|
|
特定資本 |
※ デットとエクイティの違い(安定志向のデットと値上がり期待のエクイティ投資)
たとえば、100億円の不動産投資をする場合に借入金70億円(金利3%、元本は一括返済)、自己資金30億円という資金調達をする。
不動産の純収益を6億円とすると、表面上の投資利回りは6%となる。
・デット型の投資家→70億円×3%=2.1億円の金利収入を優先的にゲット
・エクイティ型の投資家→6億円−2.1億円=3.9億円
これは、エクイティ型の投資家の投資額30億円から見れば、13%という高利回りの投資となる。
図表2−5−2
![]()
![]()
![]()
投資額100億円
|
デット70億円 |
エクイティ30億円 |
6.SPCの税務
1)SPC自体の税務
@二重課税排除(支払配当の損金算入)
一定のSPCが行う配当(中間配当、みなし配当を含む)のうち、下記の配当
益金算入要件を満たす事業年度に係る配当を支払った場合には、支払配当の損金
算入を認める制度。実質的に法人税が非課税となる。
配当益金算入要件としては、
a)社債の発行額が一億円以上であること
b)優先出資証券が50人以上の者によって引き受けられたもの
c)所得の90%超を配当に回すこと
d)同族会社や資産管理会社に流用されていないこと
図表6−1
|
|
|
通常法人の場合 |
SPCの場合 |
|
|
|
|
|
収入 |
100 |
収入 |
100 |
|
|
|
経費 |
5 |
経費 |
5 |
|
|
|
利益 |
95 |
配当 |
91 |
|
|
|
税金 |
38 |
利益 |
4 |
|
|
|
配当可能額 |
57 |
税金 |
2 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
※ 実行税率を40%としている。 |
|
||
|
|
|
|
|
||
A法人税関係の特別税制
a)受取配当等の益金不算入の不適用
SPCが受ける配当に関しては、内国法人から受ける配当であっても、法
人税法第23条の受取配当の益金不算入の規定の適用はない。
b)中小法人の軽減税率の不適用
SPCに関しては軽減税率の適用はなく、一律30.0%の法人税率により
課税
c)外国税額控除の計算の特例
外国税額控除の限度額の算定においては、支払配当の損金算入の特例を適
用する前の所得をベースにして計算することになっている。
B租税特別措置法関係
a)中小企業に対する貸倒引当金の特例の不適用
中小法人に認められている法定繰入率による貸倒引当金の設定及びその
限度額をさらに116%に割り増す特例の適用は認められない。
b)交際費の損金不算入
資本金の額にかかわらず、交際費は全額損金不算入とされる。
c)一般土地重課の不適用
SPCが行う土地の譲渡では、租税特別措置法第62条の3の一般土地重
課の適用除外とされている。
ただし、土地重課は一般重課・短期重課とも平成12年12月31日まで適
用停止とされているので、当面の間この規定の実益はない。
Cその他の税金
a)設立時の税金の軽減
SPCの本店における設立登記の際の登録免許税は、一律3万円である。
b)不動産の取得に伴う税金の軽減(図表参照)
SPCが平成12年3月31日までに資産流動化計画に基づいて特定不動産を取得した場合
@)登録免許税
A)不動産取得税